院長コラム

コロナの時代に

 緊急事態宣言が解除され、全国的に自粛という制限がなくなって以降、東京を中心とする首都圏では、連日のように三桁の感染者数が報告されています。
 毎日このような報道をみていますと、次第に慣れて、感覚がマヒしていく人もいるのではないかと心配です。
 東京都内で感染者が多く出た場所を見ていますと、人口が密集した大都市の怖さがわかります。
 人の価値観は異なるものですが、感染症のように社会全体で対処しなければならない禍には、社会の一員としてそれなりに協力してほしいものです。
 協力といっても特別なことをしてほしいというのではありません。
 感染症から自分を守るということにもっと真剣になってほしいということです。
 自分は若いから感染しても無症状か、悪くしても軽症だから、行きたいところに行って好きなことをするというような、間違った考え方の人が大都市にはたくさんいるようです。
 確かに、確率から言えば、年齢によって、重篤化する人の割合は違いますが、若くても亡くなっている人もいます。
 一旦回復して退院してからも後遺症に苦しんでいる人もいます。
 正しい情報を持たずに、無自覚な行動をとり続けるのは、まるでロシアンルーレットをしているようです。
 この世界にコロナウィルス感染症という得体のしれない感染症が発生していなかったときに自由にできたことが、今も同じようにできると考える、このような常識に欠ける人が多ければ多いほど、この世界で発症者は増え続けるでしょう。
 今東京で起こっていることは、長い自粛生活に耐えきれなかった人たちが、再開した店舗に殺到したことから起こっているのではなく、やはり、若者を中心とする多くの人たちが、感染していることに気づかず、または、感染している自覚があるのにもかかわらず、通常のように行動し、次から次へとウィルスを拡散させていったことが原因と思われます。
 そして、今や東京の人ごみの中には、どれほどの感染者がいるのかわからないような状況に陥っています。
電車やバスの中で隣の人が感染者ではないかとおびえながら通勤・通学するようでは、1年後のオリンピックなど夢のまた夢でしょう。
 この結果、真面目に予防行動をとり、自粛しているにも関わらず、東京やその周辺に住んでいるだけで何か月も帰省できない人たちがいます。
 今、各地で、帰省を相談する子供たちに「帰ってくるな」という親たちがいます。
 地域を感染から守りたいという気持ちが、子供や孫の顔を見たいという肉親の情を抑えているのです。
 今年はお盆にも帰省できない子供たちがたくさんいることでしょう。
 親に感染してほしくない、故郷にウィルスを持ち込みたくないと考える子供や孫たちと、子供や孫の顔を見たいけれど、もし、そのために地域社会に感染者がでたら申し訳ないと考える親たちがいます。
 この社会に責任を持ちたいと考える親子は「互いに思いやるほど遠くから見守る」スタイルを貫くことでしょう。
 離れていても親や子を思う気持ちは伝わり、むしろ以前より強くなるかもしれません。
 コロナウィルス感染症に正しく対処するためには、人間の英知が欠かせません。
 自分ひとりだけなら大丈夫・自分は感染などするはずがないといった根拠のない楽観的思考を捨て去り、必要な予防を確実に行いましょう。
 住みなれた地域を皆で守り、安心して過ごせるように協力しましょう。
 後の時代に「混乱のコロナウィルス感染症時代」として記録されないために、そしてその時代が可能な限り短期に終わるよう、正しく行動し、社会全体で励ましあって頑張りましょう。

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